晴れやかブログ

元ミニマリスト、節約好き。

辰巳渚著『「捨てる!」技術』:今さらブックレビュー。

今日は、辰巳渚さんの著書『「捨てる!」技術』のブックレビューを書きます。

私の好きなミニマリストさんがこの本がきっかけで捨て始めたとブログで書かれていたので、以前からずっと気になっていたのですが、ついに読みました。

20年も前に発行された本なので、今さらではありますが、ブックレビューを書きたいと思います。

 

『捨てる技術!』について簡単に説明します。

『捨てる技術!』は2000年に発売された本で、私は、2003年発売の新装・増補版を読みました。

数多くの「捨て本」「断捨離本」「片付け本」が出版されていますが、この本は、多くの人に影響を与えた、捨て本の中の名著のうちの一つだと思われます。

著者はジャーナリストであり、個人の経験だけでなく、マーケティングに基づいて、多くの人の「処理に困るもの」のアンケート調査などを行った上で書かれていというのも特徴です。

マーケティングに基づいているということも影響力のあった理由かと思われます。

モノあまり、モノ溢れの社会現象や環境問題に切り込みを入れ、その解決法として「捨てる」べきだと解かれています。

そして、捨てるためのテクニックや考え方がそれに続いています。

『捨てる技術!』:個人的な感想。

以下、私の個人的な感想を書いていきます。

『捨てる技術!』の最大の特徴。

本の冒頭で強調されているのが「捨てる」ことを肯定するという概念です。

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私が読んだのは、2003年発売の、新装版です。

私が考えるこの本の最大の特徴は、まず第一にこの点です。

日本人が捨てられない理由の大元は「捨てへの後ろめたさ」だということを、著者はハッキリと冒頭で述べていたのです。

!?

もしかして、「今さら何!?」でしょうか?

でも、私は、個人的に実にこのことにとてもビックリしてしまったのです。

というわけで、いかに私が長年「捨て」をやりながら、後ろめたさを拭えなかったのかということについて書きたいと思います。

私は「捨てる」ことを肯定することがなかなかできなかった。

私は、私なりの「捨て」を始めたのが2002年、きっかけは風水という怪しげなものでした。

『「捨てる!」技術』が発売された後でしたが、この本には出会わなかったのです。

そのせいか、長年「捨て」に取組みながら、なかなか「捨てる」ことへの後ろめたい気持ちや罪悪感が消えなかったのです。

もっとずっと早いうちに、とっととこの『「捨てる!」技術』に出会っていれば、もしかしたら、「捨てること」をずっとラクに肯定できたに違いないと思います。

私が「捨て」を始めた理由は、一言で言えば、「幸せになりたかったから」です。

自分の不幸を捨てることで何とか克服したかったのですが、そもそもそんな行為自体が恥ずかしくて仕方ありませんでした。

私は後ろめたい気持ちを抱きながら、人に言わないで隠れるように、コソコソと捨てのライフワークをやっていたのでした。

今さらながら『「捨てる!」技術』を読んで、

「コソコソ捨てる必要はなかったのだ」

「もっと堂々と捨てれば良かったのだ」

と、ちょっと拍子抜けしてしまいました。

私は、このブログでも、捨てることへの罪悪感についてよく書いています。

罪悪感の背景はいろいろあります。

日本人らしい「もったいない」もモチロンあります。

捨てたいのに捨てられない時は、自分の欲求を肯定できないという心理学的な面での罪悪感もあります。

そして、さらに、風水なんて怪しげなものに頼っている弱い自分を本当は隠したいという罪悪感もあったのです。

私は、私なりに…という、ごく個人的な狭い視野の中で、10年以上もかけてやっと「捨てることに罪悪感を持つ必要はないのではないか」と気づいてきたところだったのです。

それが、『「捨てる!」技術』では、もう2000年という、20年も前の大昔(?)に、とっくに、「捨てる」を肯定する、という概念を言ってのけていたのでした。

本との出会いは必然:タイミングも大事

上記のように書くと、私があまりにも井の中のカワズ、アホみたいに思えてきます。

そんなアホな私自身をフォローするってわけじゃないけど、やっぱり物事は全て必然だとするなら、「今だからこの本を読めた」とも言えます。

とっくの昔に出版されていた、名前は知っていたけど読んでなかった、ということにも、何か理由があるということです。

私は、なんだかんだ言って、2002年に捨てを始めた頃は、不思議な風水やスピリチュアルなものが好きだったんだと思います。

怪しげだったからこそ、「捨て」にハマれたとも言えます。

一人コソコソ「捨てのライフワークをする」のが自分一人の秘密の趣味みたいなもので、そのこと自体が楽しかったんです。

そういう心理状態だと、『「捨てる!」技術』を読んでも、あまり響かず、かえって捨てようとは思わなかったかも知れません。

長年、一人寂しく捨て活にハマっていたのが、実は楽しくてしょうがなかったからです。

でも、やっと、ここへきて、この本に出会ったということは、私にとっては今がまさにその時というタイミングだったのだと思います。

明るい気持ちで堂々と捨てればいい。

上述の繰り返しになりますが、『「捨てる!」技術』の著者の辰巳渚さんは、ジャーナリストであり、マーケティングなどもされているとのことです。

それで、この本は、著者の個人的な体験談だけではなく、多くの人にアンケートをとったりして、もっと社会的に広い視点で書かれています。

モノが余って困っている社会に切り込みを入れる立場で書かれているのです。

アンケートで印象的だったのは、物の処理で困っているのは何か?という問いに対する答えで、

男性は、

一位:本

二位:服

女性は、

一位:服

二位:本

そして第三位は、男女とも雑誌だったとのこと。

これにも驚きました。

私は、長年の個人的な体験から、もっとも断捨離や片付けが難しいのは「服」だと思っていたからです。

そして今ではかなり克服しましたが、手付かずだった時期は「本」にもとても手を焼いていたものです。

でも、多くの人が私と同じように処理に困っていたのだということを、20年もの大昔に、この本はとっくに伝えていたのです。

そして、処理に困るなら「捨てましょう」と呼びかけているのです。

明るい気持ちで(もしかすると皆と一緒に)堂々と捨てれば良かっただけだと思いました。

私のたった一人の秘密のお楽しみの「捨てのライフワーク」は白日のもとに晒され、面白さは半減してしまったかも知れません(何だかんだ不思議好きなので)。

でも、ただ明るく堂々と、捨てれば良いのだということを、『「捨てる!」技術』は教えてくれたのです。

みんなで捨てよう!

みんなで捨てよう! と呼びかけるかのような印象をこの本から受けました。

これも実は意外な点でした。何故ならば、断捨離にしても片付けにしても、「他人のものは手をつけない」鉄則みたいなものがあったからです。

でも、この著者は違うんです。結婚で一緒に暮らし始めた旦那さんの家にあったものも、どんどん捨てるように提案したようです。

モチロン、勝手に黙って嫌がるのに無理やり捨てたりはしないでしょう。

でも、どれだけ捨てた方が良いのかということを、どんどん提案していたようです。

そして、実家のお母さんにも、なかなか捨てなくても、諦めずに、捨てることを勧め続けたようです。

もし本当に「良いこと」であるならば、自信を持って、どんどん人に勧めるのが普通なんだと思います。

著者のこのような行動を見て、辰巳さんがいかに「捨てること=良いこと」だと感じていたのかということもわかりました。

 

なぜ捨てなければならないのか?

『「捨てる!」技術』のもう1つ、私が感じた素晴らしいと思った点を書きます。

それは、「なぜ捨てなければならないのか?」という理由がはっきり書かれていることです。

それは、環境問題とモノあまりという社会問題を解決するためです。

断捨離や片付けの鉄則みたいな「人のものは捨ててはいけない」というのも、考えてみれば奇妙な鉄則です。

なぜならば、一人暮らしでもない限り、誰かと一緒に暮らしているならば、誰かの荷物は同居の人に必ず影響を与えるからです。

もし「シンプルライフがしたい」と思うなら、一人だけではできないのです。

家族の物、勝手に捨てるのは確かに相手の怒りを買いますが、捨てるように提案したり、諦めずに勧め続けるという「交渉」は、大人の対応であって、やって良いことだと思われるのです。

先にも書いたように、物あまり現象は、個人を超えた社会の問題であり、環境問題にも大きな影響を与えているのです。

その大きな社会問題に対応する前の前提的な手段として、「まず、捨てる」ことをやり、それをした上で、新しい考えを打ち立てるのが大事だと説いているのです。

まず「捨てる」のが、その先への第一歩だということです。

捨てた後の新しい考えは人それぞれです。ミニマリストが良いと思えばそうすればいいし、もっと別の生き方かも知れません。

環境問題に改めて目を向けたくなり、余計なものを買わない生活をしたくなるかも知れません。

でも、その先の未来に目を向ける前にに、まずは「捨てて」リセットする必要があるのだというのが、捨てる理由です。

環境問題の前にまずは個人の利益

著者は、環境意識ではモノあまりは解決しないと言います。

このことにもとても共感しました。

実際、私自身もそのことは経験済みで、かつてゴミ屋敷に住みながら、環境問題だけに意識を向けたところ、洗った紙パックやスーパーのトレーがキッチンにたまり、ますますゴミ屋敷を加速してしまったこともありました。

著者は新装版のまえがきで、以下のように書かれています。引用します。

省エネ商品も「環境にいいから」ではなく「電気代が安いから」という理由で買えばいい。マイバッグも「レジ袋がたまるとじゃまだから」という理由で使えばいい。それを環境保全につなげる仕組みは、整いつつあるのだから。

グッドアイデアだと思いますし、とても共感しました。

環境問題を無理に良い子になって考えるのではなく、まず、自分のエゴで良いということです。

人は自分の個人的な利益を感じられないことを行動に移せるほど人間ができてはいないからです。

でも、そのエゴを追及すれば、結果として環境問題を解決していかれる仕組みがあれば、環境問題なんて考えなくても環境問題が解決していくのであれば、それで良いと思いました。

環境問題を考えるよりも、問題解決の方が大事ですから。

『「捨てる!」技術』の本の良いところは、環境問題を念頭に置きながらも、それを訴えるのではなく、個人の利益に訴えているという姿勢です。

それで、まずは「捨てるべき」なんです。

私の中で、「捨てる」ことがますます肯定されました。

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おわりに

今日は、捨て本の名著、辰巳渚さんの『「捨てる!」技術』のレビューを、簡単ではありますが、書かせて頂きました。

それで、辰巳さんの明るい語り口調も手伝い、「捨てる」ことを肯定的に感じられるようになりました。

「捨てる=ネガティブ=一人コソコソやるもの」ではなく

「捨てる=ポジティブ=白昼堂々とやってよいもの」に変わったのです。

今すでに数多くの「捨て」「断捨離」「片付け」本が出回っています。

『「捨てる!」技術』は、20年も前の大昔にとっくに出版された名著ですから、捨てる技術を身につけてしまった人にとっては真新しいことは特にないかも知れません。

また、テクニックの面では、少し情報の古さもあるにはあります。時代が違うから当然です。

それでも、まだもし読んでなくて、捨てることへの後ろめたさや罪悪感を抱えているならば、一読をおすすめします。

この本の最大の価値は、「捨てることを肯定している」ということにあると私は感じました。

捨て本の中には、「捨てなければ悪いことが起こる」みたいに、人の恐怖心に訴えるようなものもありますが、『「捨てる!」技術』はそうではありません。

(注:恐怖心に訴えるのを否定するものではありません。汚部屋のネガティブパワーに対抗して「捨て」を始めるには、恐怖心を煽られた方が行動に移せる場合もあるからです。)

とても現実的な話です。

明るい気持ちで読めました。