『下流老人』という本の感想のようなものを書きます。
感想を書きつつ本を手放すシリーズなんですが、実はこの本、つい最近かったばかり。
そして読んだばかりです。
この本、良いかどうかで言えば良い本です。でも、内容が、あまりにもショックで、もう、もう一度読む気にならないし、恐すぎて家に置いておけないので手放します。
『下流老人』について。
いかがその『下流老人』の表紙です。↓
私は、この本を読む前は、十分に老後の貯蓄できず、困って生活保護を受けるような人のことを、「努力が足りない」とか「自己責任だろう」と、内心思っていました。
そして、私自身もこのカテゴリーだと思っていたので、自分のことも同時に責めていました。
でも、この本は、そうであってもなくても、老後に生活が破綻してしまう可能性は、誰にでもあるということを伝えています。
例えば、60歳で定年を迎え、年金をもらうまでの間、十分な貯金がなければ働けばいいと、誰もが考えます。
でも、そこに予想外の出来事が起こると、老後の生活破綻に陥ってしまうのです。
予想外の出来事というのは、まずは病気、そして家族の介護、配偶者との別れなど、それまでの貯金などすぐに底を尽きてしまったりして…。
特に一人になった老後は、わずかな年金に高額な家賃で、食べていくのにも苦労することになります。
長くなるので詳しいことは書きませんが、私がこの本で知った「貧困ビジネス」というものは、読んでいてゾッとしました。
こんなことが現実にあるなんて、ショックでした。
日本の老後の最悪の部分を見たような気がします。「下流老人」という言葉でさえ軽く聞こえるほどです。
怒りと悔しさに包まれます。
実は私がこの本を手放すのは、このようなことを想像してしまうからなんです。
この本を読んだ後、数日間、自分の頭の中に湧いてくる「貧困ビジネス」の恐ろしいイメージが消えなくて苦しくなってしまったのです。
「下流老人」をつくる社会的問題。
ところで、著者は、「下流老人」になってしまう背景には、社会的な問題があると指摘しています。
特に一人暮らしのためのケアが整っていないことや、年金が少なすぎる上家賃が高すぎることは、実にその通りだと改めて思いました。
日本の年金は、結婚していることが前提で支給されるので、老後に離婚したりすると特に貧困になりがちです。
でも、今は、そんな熟年離婚でなくても、結婚しない若者も増えていますし…いや、若者だけでなく、50代である私の身内や友人知人にも、ずっと独身はたくさんいます。
そういう時代に即した年金制度が整っていないことをこの本は指摘しています。
また、結婚している人でも、相手と同時に死ぬことはまずないので、夫婦のうち、必ずどちらかは、最後に一人になり、年金が減り、生活費の負担額が増えると貧困に陥るのです。
だから、一人でも安心して暮らして行けるような制度は必要なのだと感じました。
特に著者のアイデアに共感したのは、「安い住居を公的に提供する」ということです。
また、生活保護は、今は、財産など使い果たさないと申請しても通らなかったりします。でもそれだと、立ち直ることもできません。
もっと気楽に(段階的にするなど)生活保護を受けられるようにすれば、しばらく生活保護のお世話になったあと、立ち直ることもできるのではないでしょうか。
また、日本人は生活保護は「施し」であって、受けるのを恥だと考える傾向があります。
でも、欧米などでは、生活保護は「権利」だと考え、もっと簡単に生活保護を受けるそうです。
私は、この本を読んで、生活保護は権利なのだから、困ったらすぐに申請しようと考えが変わりました。
日本の申請主義の問題。
また、著者は日本の申請主義にも意を唱えています。
これには賛成です。
申請主義には、私は以前から腹を立てていました。
日本は、活用すれば良い制度は実はたくさんあり、申請するとお金がもらえたり、年金の支払いが免除されたりします。
私もかつて、失業期間中、雇用保険をもらいながら、国民年金の全額免除を申請し、ずいぶん助かったことがありました。
でも、こんなことができると知ったのは、私は40才を過ぎてからでした。
ありがたいと思ったと同時に、「何でもっと早く教えてくれなかったのか!?」と思ったのです。
ワーキングプアという問題もありますが、私も若い頃、もっと困っていた時があったのに、頑張って年金を払っていたんです。
このようなことに、申請主義への怒りを感じます。
申請主義は「無知が損する」のです。
もっと「こんな制度があるよ」と、国の方からどんどん広告すべきではないでしょうか?
国民年金の免除申請をしないで生活苦が原因で年金が未払いになってしまうと、将来年金自体ももらえず、2重に損するのです。
このようなことも、将来の下流老人を生み出す原因になっているのだと思われるのです。
そもそも日本の家、高過ぎじゃね?
ところで、この本を読んで、これは私なりに派生的に考えたことなんですが、そもそも、日本の家、高過ぎだと思いました。
まず、家賃、高過ぎです。私は、一時、東京で8万円の家賃を払って生活していたことがありましたが、仮にこれが4万円だったとしたら、浮いたお金は貯金できたのです。
ワーキングプアの問題はここにもあると思います。家賃にとられて貯金もできないのです。ここにも下流老人を増やす原因があるのかと思っています。
また、持ち家や持ちマンションだって高過ぎです。何千万円も払ったのに、何十年後かには価値がゼロになってしまうこともあるわけです。
価値がゼロにならなければ、売って現金を得ることもできるのに、補修もできない持ち家で暮らす老人もいるそうです。
私は、このような状況を「当たり前」と考えて疑っていませんでした。
住居に関して「賃貸か持ち家か?」談議はくりかえされていますし、私もやってきました。
でも、それ以前に、賃貸だろうが持ち家だろうが、日本は家が高すぎるのだと感じました。
大家業や建設業、不動産業などだけが儲かるように価値が設定されているかも知れません。
もしそうだとすると、「家が高額すぎる」というのは、社会問題だと思うのです。
下流老人は口を揃えて「家賃を払うとお金が残らない」と言うのだそうです。
少なすぎる年金と高額な家賃…一億総下流老人になるのは自然なナリユキなのです。
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おわりに
今日は、本を手放しつつ感想を書くシリーズで、『下流老人』という問題作について書きました。
買ったばかり、一度読んだだけで、この本の内容は私の心に深く突き刺さりました。
ただ、今の私にできるのは、できるだけそうならないように、明るい未来をイメージしつつ、夫と仲良く、健康に気をつけて、仕事と貯蓄を続けていくことだけだと思っています。